伝承遊び「折り紙」のリハビリテーションな展開

Ⅰ.折り紙は人のどんな能力を活性化させるのだろう。折り紙を折り始めると次はどことどこをあわせるのだろう。次はどこを折ってどこを開くのだろうかと自然に目は折り紙の面に向けられます。出来上がるまでの時間、口数も少なく手先に集中している感じがします。この集中している感じについて考えてみました。
                 
 集中している感じを「集中力」とします。集中することを妨げるものは外から聞こえる騒音やほかの人からの働きかけなどが考えられます。外からのこうした刺激だけでなく「情動」といって心の中からの刺激も「集中」を妨げていることが昨今の脳科学ではわかったきています。内外からの刺激が同時に存在する中である目標に向かう力を「集中力」という言葉で表します。「集中力」が幅広く人間の能力を表現します。明確に目標がわかっているとき「集中力」が発揮されます。
 いろいろな目標や事象は同時に存在するものですがその中から1つに絞りそれに焦点を合わせてそれを明瞭に捉える能力が必要です。その能力を選択的注意といいます。
 ものをつくりだす。ものをつくるためには選択的注意が働きいろいろな刺激から1点に絞りこみその絞って目標に向かって
邁進する「集中力」がなければなりません。その積み重ねがその人固有の表現になったり作品になったりし「創造性」が発揮されることになるのです。
 
  注意の定義:同時に存在するいくつかの認知や思考の対象のうちの一つに焦点を合わせ、それを明瞭にとらえること(「神経心理学辞典 医学書院」

「情動」という「心の中のおしゃべり」のために物事に集中できないということはだれしもいつでも経験していることです。 小さな出来事や 人の言葉に気を病んだりするのも「情動=心のおしゃべり」によるものです。行動を伴わない心の
おしゃべりは漠然として不安の温床になります。この心のおしゃべりを抑えて物事に集中するには行動=能動的集中が効果を
奏します。
 心の中のおしゃべりに夢中になり漠然とした不安をかかえているときに活動する脳の部位は「前頭前皮質内側部」何かに集中しているときにはその近くの「前頭前皮質外側部」が活動し「前頭前皮質内側部」の活動を抑制していると言われています。前頭前皮質外側部は目の前の現実に対応するような行動をとることにより活性化されることがわかっています。 心の中のおしゃべりに身を任せる受動的集中は漠然とした不安を深めると考えられ「集中力」が発揮されません。考えていても達成感がない。考えているだけで疲れる。時間が長く感じられるなどの感覚はこの「心のおしゃべり」にエネルギーが費やされていると考えられます。心身にいい集中・創造的な活動では時間が短く感じられたり達成感があったり、楽しかったりするものです。そうした集中は能動的な集中ということができます。。

今回のワンコインセミナーのネタ本は
  参考図書: フォーカス ダニエル・ゴールマン著 土屋京子訳 日本経済新聞社2015年

Ⅱ.折り紙
  今回のセミナーではひとつの折り方の経験を展開することによって折り方を習得するだけでなく身近な生活場面に
  つながるものを選んで紹介しました。
   ・ 鯉のぼり
      鯉のぼりの折り方 
        紙のサイズを変えて食卓へ(箸置きと楊枝入れ)
   ・ 兜 
      兜の折り方
        読書の友ブックマーカー・
                 ポチ袋

Ⅲ.デイケアやデイサービスで折り紙を楽しく
―折り紙苦手な人のハードルを下げてみんなで楽しむ―

・折り鶴リース
 
グループで一つの作品にする活動への提案です。
 折り鶴が折れる人たちが集まれば・・・ 
 作業療法士の介入は ジョイントのところ つながるところを見て楽しんでもらいましょう。
 台紙の色は参加者に選んでもらうのがいいでしょう。千羽鶴と違う楽しみ方です。

折り鶴リース
折り鶴リース
 

・折り紙の家で「暮らしの手帖」

折り紙の複雑な形に抵抗感のある方へ
家らしくみせるために瓦や窓・戸を描きます。身近な「家」を描くことで折った物へ注意が向きイメージが膨らみます。
ならべれば 懐かしい「暮らしの手帖」風のほっこりした雰囲気がでます。

簡単な折り方で家づくり 屋根瓦・窓・扉を描くことでその人らしい家に
簡単な折り方で家づくり
屋根瓦・窓・扉を描くことでその人らしい家に

    
    
   

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