寄稿 河合妃美子
車いす生活から解放されて
頚髄腫瘍の術後から12年が経ちました。
2ヶ月間入院をして、退院後しばらくは車椅子で生活していました。その後、年を追うごとに首や肩の痛み、上腕から手足の指先のこわばりや拘束感は少しずつ軽くなっていき、術後3年ほど経つと多少の動きづらさはあるものの工夫をしながら、徐々に日常生活動作ができるようになっていきました
朝焼けに誘われて
早朝にこわばった身体を少しずつ動かしながら、窓から見える朝焼けをぼんやりと眺めていました。そのたびに、この美しい景色をもっと近くで観たいという気持ちがでてきました。まずはある程度の脚力をつけなければいけないと思いました。友人から譲り受けたウォーキングポールで、歩数にすると600歩ほどの自宅回りをゆっくりと回ることから始めました。途中で足や腰が痛く右半身が痺れて歩けなくなり、引き返すこともしばしばありました。近所の公園へ家族で行き、時々ベンチで休憩したりしながら歩く練習をしましたが、痛みに耐えながら歩くことができても、翌日は全身の痛みと脱力感があり動けない時もありました。身体を動かして発生する痛みのために自宅に引きこもってしまう日が多くなり、体調が良い時だけしか散歩をしないという日々が6年間ほど続きました。
そして 9年の月日が・・・
術後9年目には、たまにしかしない散歩でも、間欠歩行で1kmくらい歩くことができるようになりました。けれど、ゆるやかな坂道を下ると転倒しそうになるため、平坦な道を選んでいました。
もっと安定して歩きたい一心でリハビリクリニックへ通いはじめ、毎日ストレッチをしました。そして、ようやく車で数分の池のある公園まで行けることになったのです。最初の頃は不安ばかりで、立ち止まったり、座ったり、心細くもなりながら歩きました。けれど、自分はひとりではないのだと感じる時がありました。散歩をして様々な人に出会ったのです。
散歩で出会う朝焼けの人たち
まだ薄暗い早朝に、池のほとりでカメラを抱えて静かに佇んでいる高齢の男性は、数十年前から朝陽の写真を撮るために、毎朝来ていると言われました。ご夫婦で歩いている方は「この道はハッピーロードと名付けたの」と教えてくれました。また、杖をつきながら散歩をしている男性は、毎日2回ほどゆっくりと散歩をされているとのことでした。
人それぞれに色々なものと向き合いながら散歩をしています。今まで長い間、痛みに負けていた自分が情けなく恥ずかしくなりました。
音楽を効きながら 1日の始まり
そしてなによりも日の出前の池はとても静かで空には朝焼けが広がり、幻想的な雰囲気をかもしだしています。水鳥も飛び立ち、やがて朝陽が昇り、時の経過とともに景色が変化してゆきます。
身近な美しい風景に深呼吸し、開放感に満たされて、人との出会いと時の移り変わりを感じる散歩に大きな勇気をもらいました。少しずつ自信がついて、マイペースで継続して歩くことが楽しくなり、毎日お気に入りの音楽を聴きながら歩いています。
ウォーキングポールは、歩行時の安定性向上と負担軽減を目的とした歩行補助具です。2本のポールを交互に使用することで、上半身の筋力も活用でき、下肢への負荷を分散させます。特に膝や腰に問題のある方、バランス能力が低下した高齢者、間欠性跛行の患者にとって有効です。ポールの使用により歩行距離の延長、転倒リスクの軽減、運動効果の向上が期待できます。長さの調整機能やグリップの形状選択により、個々の身体機能に適応可能で、リハビリテーションや日常の健康維持活動において広く活用されている。
間欠歩行(間欠性跛行:Intermittent Claudication)は、歩行時に下肢に痛みやしびれが生じ、休息により症状が改善する病態である。この症状は患者の日常生活に大きな制限をもたらし、QOLの低下につながるため、適切な理解と対応が重要である。されています。
