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2020年度第3回ワンコインセミナー ヘルパーステーションの仕事と感染対策 森美親氏の場合

ワンコインセミナー(2020.11.26)

 【ヘルパーステーション「マイライフ」の仕事と

               コロナ感染対策自粛の影響は?】

◆学生ボランティアやヘルパーを地域で生活する障碍当事者宅に派遣するマイライフの仕事では、春の新学期シーズンに募集する学生が大きな力になっていますね。

森氏「新入学時期の勧誘活動ができませんでした。これは大きいです。僕たちの 生活の状況を社会に知ってもらう意味でも機会を失ったことになります。」

◆森さんは、ヘルパーの派遣の調整や利用者の状況調査を主な仕事にされていますがリモートの仕事に変更になって仕事は、かわりましたか?

森氏「6月の終わりごろからリモートでの仕事に変わりました。調整は、これまでもリモートやPCを使ってきていますので作業は、変わらないでできます。調査ですがいままで私に二人の職員が同行していましたが私一人で行くことになりました。 以前にくらべ一人で行動することが増え、外出時の緊張感が変わりました。ヘルパーの欠員補充などで職員が取られるようになったからです。」

◆森さんは、マイライフの事業のほかに医療・福祉系大学での「障碍当事者と地域生活」などをテーマに講義をされていらっしゃいます。大学もリモート講義に切り替えたりで試行錯誤をされているようですがリモートの講義は、どう思われますか

森氏「リモート講義には、メリットがありました。普段の話だけでなく実際の私の生活の様子や、住宅改修の事情などを見せることができたからです。私の講義の幅が広がりました。」

◆コロナ感染対策でヘルパーさんの家事・身体介護の仕事は、どう変わりましたか

 森氏 「ヘルパーに仕事の依頼を拒否されることは今のところありません。24時間の身体介護を必要とする利用者からのニーズは、減っていません。外出支援のヘルパーさんの仕事がありませんからコロナ前に比べ7割くらいの仕事量です。利用者にも外出は、控えてもらっています。学生バイトからは、飲食業等のアルバイト先が減少するなか持続的に仕事があるのでがんばりたいという話を聞いています。」

「系列のデイサービス事業では、人数制限をしていますがマイライフの活動は24時間必要です。これまで感染者がでていないのは、双方の努力の成果でしかなと思います」

「僕のうちは、二人ですが 二人とも障害当時で同時にへルパー4人になります。介助前の検温、手洗い、マスクは必須で、時間差や短時間の介助を余儀なくされています。」

◆ 今回のコロナ禍では、行政の支援も試行錯誤です。行き届いているとは思えませんね。

  森氏 「厚労省からは、何回かマスクの支給がありました。僕には、小さくて使えませんでした。厚労省から何か給付や配布があるわけではありませんので感染対策は、厚労省マニュアルにそって一般事業者と同じ対応をしています     

◆ 障碍当事者・福祉事業者としてなにか行政に要望しようとしていることがありますか

 森氏「今 心配していることがいくつかあります。感染者が利用者・ヘルパー・職員のどこかで出た場合、事業がたちゆかなくなる心配があります。身体介護や家事援助が不可欠な地域の障碍当事者にとって我々の仕事が生存に欠かせない役割であることを今回の件であらためて実感しています。経済的な支援だけでなく、医療。業界も同じだと思うけど人的支援が途切れないような仕組みや支援の方法を今後考えてもらいたい。」

◆ 今、森さんが 感じている心配は、なんでしょうか

 森氏「外出機会の減少です。自分の運動機能の低下を感じています。毎日通所されていた仲間も車いすの自走が困難になってきているといっています。外出で健康が維持されていることを実感します。調理が困難な人にとっては、外食が欠かせませんが。飲食店の制限も大きく、車いす対応の利用可能な店を新たに探さなくてはなりません。時間帯、人混みをさけて外出するようにしています。」

 森氏「日曜日は在宅 やる気なくボーっとする時間がおおくなりました。夫婦の会話が増えたわけではない 家庭でも距離とりらなければなりません。   一人で音楽を聞く、映画を見る機会は、もつが・・」

 森氏「ヒトと人との繋がりがきれるのが一番こたえます。仕事で訪問して顔をみる重要性を感じています。外出できない在宅生活の利用者とせっかく繋がってきている人とも今年1年話していない状況になってしまっています。」

 森氏「 感染対策も気を付けてる人は、ほんとに気を付けていますがゆるい人は、ほんとにゆるい。基礎疾患を持ち、免疫力の低下している人の危機感は、とても大きいものと思います。僕の場合マスクです。先日病院に受診したときにマスクの有無で血中酸素濃度を比較してもらいました。僕の障害では、吸う吐く力が弱いためマスクをし続けるのは苦痛です。マスクをすると3%も低下してしまいました。いろいろ試して自分にあったマスクをさがさなければなりません。」

 今回は、リモートでのインタビューにお応えいただきありがとうございました。

森美親氏(もり よしちか) プロフィール

森美親さんは、私が作業療法士として最初に務めた福祉施設の職業訓練生の一人です。卒業後わだちコンピューターハウスでプログラミングの仕事をされました。現在は、AJU自立の家の24時間ヘルプ事業「マイライフ」で利用者の人たちのニーズの掘り起こし、ヘルパー研修、生活ヘルプの調整を主な仕事とされて啓蒙に努めていらっしゃいます。ご自身も脳性麻痺による歩行、構音の障害ををお持ちで移動は車いす、ヘルパーによる日常生活支援をうけていっらしゃいます。奥様は、職業訓練生時代からのお知り合い、同じ障害をお持ちです。お二人で職場近くに住まわれています。 

インタビュアー(田原美智子)

インタビューを終えて:11月26日のワンコインセミナーは、リモートインタビューという形式に挑戦しました。コロナ感染症が国内で広がり初めて11か月時点でのインタビューです。この原稿のHP掲載が2月になってしまいましたことをお詫びいたします。しかしインタビューの内容は、決して古いものでは、なく今一度振り返っていただき読者の方々の生活の見直しにしていただきたいと思います。いかに外出や繋がりが必要か、そのために何を努力すべきか。行政は、今後どのような感染対策施策を検討すべきかの一助になれば幸いです。

訪問リハビリとコロナ

訪問リハビリテーションに携わる作業療法士も増えました。私もその一人。今年は、コロナ感染症の蔓延に伴い、勤務先の訪問リハビリテーションもサービス提供の検討を余儀なくされました。なんとか利用者家族の理解もいただき、毎週1回の訪問ができていることは、幸運としかいいようがありません。

 感染症対策としてできたことを簡単にリハスタッフ側からあげてみました。第2波、第3波に備えて考えてみたいと思います。

 ① デイケアの勤務中に訪問に出ます。

              → 訪問用のケーシに着替えました。

 ➁ 私の検温は、起床時・昼休みに行います。 37度以上は、勤務しません。

 ③ 毎日行動記録をつけています。といっても1週間にまとめ書きですが・・・

 ④ 訪問先では、滞在時間の前後に手洗い・アルコール消毒・マスク使用をします。

 ⑤ 利用者の検温・バイタルチェックをします。

 ⑥ 私も感染チェックをしていることをお話ししています。

 ⑦ 利用者の通うデイサービスやご家族の感染対策状況などの情報収集をします。

 ⑧ 可動域やリラクゼーションや自動運動介助は、身体接触をしますので前後にアルコール消毒になる了解もとります。

 ⑨ 利用者、家族のマスク使用は強要しません。発熱などの連絡は早めにしてもらう約束をケアマネ―ジャーからしています。

 ⑩ 退出するときには、「お風邪をひかないように」と注意を促し、地域の感染状況などの知っている情報をお知らせするようにしています。

 こうしてみると今後の対策としては、個人レベルでは、手洗い・うがい・外出規制、施設レベルでは、対策の継続と職員の検温・早期発見隔離、地域での情報共有が可能です。年末にかけ、感染症患者の急激な増加が見込まれる今は、医療の逼迫を最小限にするために隔離施設の確保やGOTOシリーズで高まってきた経済活動を抑制しながらGOTOの恩恵を受けていない業界や人たちの経済的な支えに注力するべきでしょう。

 通所施設の利用に比べ今後訪問リハのニーズが増えることを見込んでスタッフや利用者・その家族の自衛に頼るだけでなく、組織的なPCR検査や、優先的なワクチン接種を地域福祉行政主導で進められるよう願っています。